YOSHIDA keiko Illustration

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前回のつづき

 

とにかく、私が初めて依頼をうけたお仕事ですから、

自分が後悔しない仕事をしようと思いました。金・土・日はフル回転です。

 

時間を目一杯頂いたのですから、クオリティの保証だけは何が何でも外せません。

そのとき、美大での経験が頭をよぎりました。

時間が沢山あると、あれもいいなこれもいいな、と自分にできないことまで想像が膨らむのです。

そうして想像と現実(実力)の間で苦しむことになり、「あれだけ時間があったのに、これ?」

という作品を作ってしまうのです。

この学生時代の苦い経験を肝に銘じて、仕事に取り掛かりました。

 

仕事机の前の壁に、今回挿絵をつける文章(テキスト用紙)を貼って、

テキストを見て→自分の描いたイラストを見て→テキストを見て→イラストを見て・・・

というように、何回もこの動作を繰り返したのを今でもよく覚えています。

そして、自分の答えで応えているか。これを何度も確認しました。

 

そうやって完成させ、イラストを出版社に郵送しました。

担当デザイナーの方から電話があり、大変喜んでくれて、本当にほっとしました。

それからしばらくしてイラストが掲載された雑誌を頂き、

イラストとともに自分の名前を見つけた時が、一番感慨深かったです。

 

そしてこの経験が、次のお仕事(表紙の仕事)に繋がりました。

私が目標としていていた装画のお仕事です。同じデザイナーの方が声をかけてくださいました。

仕事を貰うきっかけは、自分ではどうにもできませんが、

もし仕事をしたら、その仕事が宣伝をしてくれます。

必ずどこかで誰かが見てくれています。

 

 

納期の壁

前回からのつづき

 

建物に到着し、打合せメンバーはデザイナー2名と編集者1名。

雑誌の説明をうけ、私の作品(ポートフォリオ)を見ながら、

「こんな感じがいいですね...」という感じで進みました。

そして納期の話になり、いつまでに欲しいという期日を聞いた瞬間、

私は体が固まってしまいました。こんなに短いんだ!と。

 

なんせフルタイムで仕事してましたから、土日ぐらいしかまとまった時間がとれません。

そんな私をみて、できないようなら一部(3点のうちの1点とか)を他の人に頼みますが、

と言われ、物凄く迷った挙句に、「はい」と答えました。

やはり、どうやってもできないものを、できるとは言えなかったのです。

全部ほかのイラストレーターに振られなかっただけでも、本当にありがたいです。

 

そうしたら、できれば全部吉田さんにやってほしい、と言われました。

そこから納期の調整をしてくださり、じゃあ色校正はなくしましょう、という提案を

してくださって、その時間を省くことで納期を最大限まで延ばしてくださいました。

本当に救われました。これならできる!って思いました。

 

大事な色校正をなくしてまで納期の調整をしていただいたのですから、

次は私がそれなりのものを提出して、依頼にこたえなければなりません。

時間を一分も無駄にしたくなくて、打合せの帰りの電車の中からこの仕事がスタートしました。

家に帰りつくまでの夜の道中、どんな絵にしようかとずっと考えていたのですが、

一瞬だけ、「結果をだせなかったらどうしよう」という恐ろしい不安がよぎりました。

でもそれはほんとうに一瞬でした。

なぜなら、お仕事を貰った喜びのほうが勝っていましたから。

絶対に結果をだしてみせる、という気持ちのほうが強かったのです。

これも今思うと初心者の強みかもしれません。😅

 

次回につづく